「長いシールドを使うと音がこもる」
「高域が失われて音が細くなる」
「ケーブルを変えたら音が変わった」
これらの現象の多くはシールドケーブルの「静電容量(寄生容量)」が原因です。
この記事では、シールドケーブルの静電容量とは何か?
そしてなぜ高域が失われるのか?をやさしく解説していきます。
ちなみに高域が減ることは必ずしも悪いことではありません。高域成分が減った分、「太い音」「中低域に厚みがある」という印象になることもあります。
仕組みを理解すれば、自分の好みに合わせたシールド選びができます。
ぜひ参考にしてみてください。
シールドケーブルの静電容量とは?
静電容量とは
そもそも静電容量って何なの?という話ですが、Wikipediaの定義を引用すると:
静電容量(せいでんようりょう、英: electrostatic capacity)は、コンデンサなどの絶縁された導体において、どのくらい電荷が蓄えられるかを表す量である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%99%E9%9B%BB%E5%AE%B9%E9%87%8F
要するにコンデンサのように電荷を蓄える性質によって、どのくらい電荷が蓄えられるかを表す量のことです。
静電容量:2つの導体間に電荷を蓄える能力を表す値(単位:ファラッド F)
シールドが静電容量を持つ、ということはコンデンサとしての性質を持つということですが、これはどうしてでしょうか?
シールドケーブルの構造
シールドの静電容量について理解するために、まずシールドケーブルがどんな構造になっているか見てみましょう。
メーカーによって細かい部分は違うのですが、シールドケーブルは内側から順に:
- 中心導体(芯線):信号を伝える線(ホット)
- 絶縁体:中心導体を包む
- 外部シールド:信号のグラウンド、ノイズシールド
という3層構造になっています。
手元にあったBELDEN 8412の断面は下記になります。

ステレオ信号のシールド線だったので少しわかりにくいですが、このようになっています。
シールド線の構造の詳細は、下記記事を見るとよりわかるかと思います。
シールドのコンデンサとしての性質
下記にて解説しましたが、コンデンサは「2枚の金属板が向き合った構造」になっています。
シールドケーブルも:
- 中心導体(金属)
- 絶縁体
- 外部シールド(金属)
という、2つの導体が絶縁体を挟んで向き合う構造になっています。
つまり、シールドケーブルは構造上、コンデンサとして働いてしまうのです。
そしてコンデンサとして働くということは、静電容量を持つということです。
シールドの静電容量
実際のシールドケーブルの静電容量はどの程度でしょうか?
これはシールドケーブルの商品ページに、スペックとして大抵は記載されています。
例えば、MOGAMIの2524の商品ページを見てみましょう。
電気的・機械的特性の欄を見ると、静電容量は「130pF/m」と記載されています。
これは1mごとに130pFのコンデンサとしての性質を持つということです。
| ケーブル長 | 静電容量(130pF/mの場合) |
|---|---|
| 3m | 390pF |
| 6m | 780pF |
| 10m | 1300pF(1.3nF) |
ケーブルが長くなるほど、静電容量も大きくなります。
ちなみに、ギターのトーン回路で使われるコンデンサは0.047μF(= 47,000pF)や 0.022μF(= 22,000pF)程度なので、シールドの静電容量はそれと比べるとずっと小さい値です。
しかし、この小さな静電容量が音質に影響を与えるのです。
なぜ高域が落ちるのか?
シールドケーブルがコンデンサとしての性質を持つことを見てきました。
ではなぜ高域が落ちるのでしょうか?
シールドの静電容量が音質に影響する仕組みを理解するには、RCローパスフィルタという概念を知る必要があります。
RCローパスフィルタ
下記がRCローパスフィルタの回路例です。

詳細な理屈はコンデンサの記事を見ていただければと思いますが、簡単に説明すると:
- 高い周波数の信号は、コンデンサを通ってグラウンドに流れやすい
- 低い周波数の信号は、コンデンサを通りにくく、出力側に進む
結果として、高域成分がカット(ハイカット)されて低域成分が通りやすい(ローパス)回路になります。
シールドでRCフィルタが形成される
ギターとアンプやエフェクターをシールドで繋いだとき、意図せずRCローパスフィルタが作られてしまいます。
・ピックアップやアンプ、エフェクターにはインピーダンス(抵抗成分)がある → R
・シールドケーブルはコンデンサとして働く → C
この2つが組み合わさってRCローパスフィルタを形成

先ほど説明した通り、シールドケーブルはコンデンサとしての性質を持ちます。
そのため、高い周波数の信号は、シールドのコンデンサ成分を通じてグラウンド線に流れてしまいます。
結果として、高域が減少するのです。
バッファを使うとなぜ改善するのか?
シールドの静電容量の影響ですが、バッファを使えば使用する場所によっては影響を小さくできます。
では、なぜバッファを使うと改善するのでしょうか?
バッファの役割
下記記事でもバッファの役割について簡単に説明しましたが、バッファーはハイインピーダンス信号をローインピーダンス信号に変換してくれる回路です。
これだけ聞いても何が何やらという感じかもしれませんが、簡単に言えば電圧(信号)はそのままに、より安定して電流を流すことができるようになります。
今回大切なのは、インピーダンスという抵抗成分をバッファによって下げることができるということです。
カットオフ周波数への影響
RCローパスフィルタにはカットオフ周波数という重要な値があります。
カットオフ周波数とは、「この周波数から高域が減衰し始める」という境界線のことです。
RCフィルター計算ツールのページで詳細に解説していますが、下記式にて計算可能です。
バッファを通すと、カットオフ周波数の計算式のR(出力インピーダンス)が小さくなります。
Rが小さくなれば、fは大きくなります。
可聴域よりも十分大きい周波数までカットオフ周波数を上げてしまえば、実質的に高域減衰は起こりません。
シールドを使う位置による違い
これまでの説明から、重要なことがわかります:
シールドの静電容量による音の変化は、どこで使うかによって大きく異なる
ギター → エフェクター間(バッファ前)
- ピックアップの出力インピーダンスが高い
- シールドの静電容量の影響を受けやすい
- 長いシールドを使うと高域が削られる
エフェクター → アンプ間(バッファ後)
- バッファの出力インピーダンスが低い
- シールドの静電容量の影響を受けにくい
- 長いシールドを使っても問題になりにくい
そのため、シールドで音を積極的に変えたい場合には「ギターとエフェクターを繋ぐシールド」にこだわった方が効果的です。
まとめ
今回はシールドケーブルの静電容量と高域減衰の仕組みについて解説しました。
要点をおさらいしておくと、
- シールドケーブルは構造上、コンデンサとして働く(静電容量を持つ)
- 長いシールドほど静電容量が大きくなり、高域が削られやすい
- バッファを使うと出力インピーダンスが下がり、シールドの影響を受けにくくなる
- シールドの静電容量の影響はギター → アンプ(エフェクター)間で最も大きい
となります。
高域が削られることは必ずしも悪いことではなく、太い音色にもつながるので好みに合わせて選ぶのが大切かと思います。
自分好みの静電容量を探してみてください。









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